(2024/10/12) 担当:長尾 小百合(事務局・会計担当 30期)
俳句同好会 第31回「蘇鉄の会」報告
令和6年10月11日(金)
秋晴れの天気の中、
清澄白河庭園の涼亭にて秋の句会を開催。
3方がガラス張りの窓に囲まれた室内からは
紅葉にはまだ少し早い青々とした木々を眺めることができました。
涼亭は池の中にせり出した形で建っていて
池の水が日の光に反射して室内の天井に映ります。
ゆらゆらと揺れているやわらかな光を感じながらの
風情ある句会となりました。
今回の投句参加者10名(含む講師)、投稿句は全40句でした。
兼題:「月」一句
季題:「秋」三句
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【城下洋二先生投句】
昼酒の酔ひ残りたる盆の月
風切つて蜩の空帰りけり
天高し浅間山へ雲の急げども
菜園のきちきちばつた手に包む
城下洋二
令和6年10月
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【選句と選評】 講師 城下洋二
<特選>
老夫婦酒を嗜む月夜かな(良)
情景が目に浮かびます。
「飲む」ではなく「嗜む」としたところが
品格のある老夫婦像を想像させます。
島の海流れ込むなり天の川(小百合)
景が大きくて素晴らしいのですが、
この表現だと海が天の川に流れ込むようにと
られかねないので。上下入れ替えてはいかがでしょう。
(参考)天の川流れ込みたる島の海
線香の匂ひかすかに秋の風(南行)
お彼岸のお墓参りでしょうか。
残暑のなか線香の香りの混じった風に
ふと秋を感じたという繊細な句です。
電線は五線譜歌うは秋雨(真智子)
面白い発想です。
ただ、原句はかなり破調になっており、
語調を整えてみました。
(参考)電線は五線譜歌ふ秋の雨
<並選>
彼岸花馬頭観音寄り添ひて(博石)
情景は見えるのですが、
野の仏と彼岸花の取り合わせは多いので、
一工夫必要です。
赤とんぼ群れる草地の重機かな(真智子)
開発の波が押し寄せている現代の風景です。
夕日射る真夏の瀬戸や墓参り(徹)
夕凪の瀬戸内海、いかにも暑そうですね。
鈴成りやムラサキシキブ石山寺(真砂)
下五を字余りにすると、
句のリズムが整いにくいので、
下五と上五を入れ替えたほうがいいです。
ただ石山寺と紫式部は付き過ぎの感があります。
(参考)石山寺ムラサキシキブ鈴生りに
放たれぬ赤耳亀よ月とおれ(勝利)
多分作者の意図と異なると思うのですが、
亀は人に、月は地球にそして自分も・・
囚われの身だと解釈すると面白い句になります。
(参考)囚われの赤耳亀と月と俺
老骨や月を肴に酒を飲む(まさ)
卑下して言っているのでしょうが、
「老骨」はこの場合適切ではないので
次のようにしてはいかがでしょうか。
(参考)老いてなほ月を肴に酒を酌む
橋渡るブラウス白し月明り(小百合)
月光の明るさをブラウスの白さで
表現したところが素晴らしい。
ただブラウスが白いのは月明りのせいだと
種明かしをしているので余情が乏しくなっています。
季語を変えてみてはいかがでしょうか。
(参考)橋渡るブラウス白き今日の月
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第31回「蘇鉄の会」互選結果 ( )内数字は得票数・講師選含む
兼題「月」
真鍮の飛蝗も鳴くか小望月 (0)真智子
老夫婦酒を嗜む月夜かな (1)良
ビル街に傘をかぶった後の月 (0)博石
橋渡るブラウス白し月明り (3)小百合
日の本や災禍宿りし月今宵 (2)徹
老骨や月を肴に酒を飲む (2)まさ
月は天雲を破って龍昇る (1)南行
山の端に月満ち出づや団子蒸す (3)真砂
放たれぬ赤耳亀よ月とおれ (1)勝利
当季句「秋」
低き雲にわかに燃える夕焼けかな(0)真智子
秋深し遠き故郷同窓会 (0)良
彼岸花馬頭観音寄添ひて (3)博石
島の海流れ込むなり天の川 (1)小百合
枝葉揺る沢の音清し菖蒲園 (0)徹
天高く一筋の群雁わたる (0)まさ
線香の匂いかすかに秋の風 (4)南行
秋日和街角カフェの椅子に猫 (3)真砂
神無月最後の朝顔弦伸ばす (0)勝利
赤とんぼ群れる草地の重機かな (6)真智子
何気なく銀杏ひろい秋を知る (0)良
秋祭り男の汗や鉢合わせ (1)博石
白粉の花をちぎりてラッパ吹く (3)小百合
短夜や寝不足嵩むパリ五輪 (1)徹
田舎道畔に整列曼珠沙華 (2)まさ
那智の滝思い起こせど秋暑し (0)南行
新駅舎だんだん通りに青蜜柑 (0)真砂
遅咲きの豆朝顔も色移す (0)勝利
電線は五線譜歌うは秋雨 (1)真智子
秋祭り神輿宮だし朝六時 (1)良
天辺から浮世見下ろす百舌鳥の黙(1)博石
夜食する後ろめたさや握り飯 (2)小百合
夕日射る真夏の瀬戸や墓参り (2)徹
稲雀電線止まりて機会待つ (1)まさ
大潮に引き摺り込まれ秋彼岸 (0)南行
鈴成りやムラサキシキブ石山寺 (2)真砂
雨台風気もそぞろなり古河童 (0)勝利
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第31回「蘇鉄の会」ご案内
開催日時:2025年1月11日(土)12:00~
選評講師:城下洋二先生
御題:兼題「門松」1句
当季(冬)雑詠3句 計4句
投句締切:2024年12月26日(金)
投句方法:兼題1句と当季雑詠3句の計4句
※あらかじめメールにて上記締切までに俳句の投稿をお願いします。
下記メールアドレス迄お送り下さい。
nagao@work21.co.jp
ワード文書でファイル添付又はメールべた打ちでもOK。
開催場所:築地 ボン・マルシェ
東京都中央区築地4-7-5 築地KYビル 2F
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(2024/07/08) 担当:長尾 小百合(事務局・会計担当 30期)
俳句同好会 第31回「蘇鉄の会」報告
令和6年7月6日(土)12:30~
小石川後楽園にて夏の句会を開催しました。
7月に入ったばかりだというのに
東京都心の最高気温は34度超え。
それでも会場の涵徳亭の日本間から眺める
青々とした緑が揺れる風景が涼し気で
心を穏やかに句会を進めることができました。
今回の投句参加者名(含む講師)、投稿句は全32句でした。
兼題:「鬼灯市」または「四満六千日」1句
季題:3句
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【城下洋二先生投句】
鬼灯市売り声高く水を遣り
よく晴れて川濁りたる小暑かな
父の日の坊ちやん団子卓の上
梅雨雲の白き日輪青菜畑
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【選句と選評】 講師 城下洋二
<特選>
験直し鬼灯市に出かけんか(博石)
七月十日は浅草観音の四萬六千日にあたる。
鬼灯市に行って観音様にお参りして、そのご利益にあやかろう、
最近の不運な出来事を打ち払おうといううのである。
直截な表現がかえって新鮮である。
「出かけんか」は文語では「出かけむか」。
短夜や覚めて幾度も時計見る(小百合)
明日大事な用事でもあるのだろうか。寝なければと思うほど、
夜中にたびたび目覚めて、熟睡できない。短夜はもう明けそうである。
実感がよく出ている。
控え目のアロハシャツ着て外出す(勝利)
「控え目の」のフレーズで作者の心の動きがよくわかる。
おしゃれをしたいが、年の割には派手過ぎるかなどと気にしながら、
アロハシャツを着て外出する姿が目に浮かぶ。
さざ波の代田に揺るる山の影(小百合)
よく晴れた日だろう。水を張ったばかりの代田にそよ風が渡り、
山の影が映っている光景が浮かぶ。大きな景を過不足なく描写している。
ゆらゆらり藪蚊は腫れた腹かかへ(真智子)
たっぷり血を吸った藪蚊が酔っぱらいのようにふらふら飛んでいるのを、
ユーモラスに描写して、秀逸である。
<並選>
若竹や衣脱ぎ捨て天を突く(まさ)
竹皮を脱ぎ、若竹がまっすぐ伸びるさまは清々しく、
まさに天を突く感じだ。
ジャカランダ香りほのかに遍路道(真砂)
ひなびた遍路道にそそり立つジャカランダの青紫の花が
目に浮かんでくるのだが、
ジャカランダが季語として定着しているかどうかは不明である。
万緑の上雲白く流れゆく(南行)
万緑と白い雲の取り合わせはきれいな情景だが、
雲は上にあるので「上」は不要。
(参考)万緑や真白き雲の流れゆく
大慌て逃げる蜥蜴の尾の細さ(真智子)
このままでもいいが、あえて擬人化せずに作ると次のようになる。
(参考)草叢へ逃げ込む蜥蜴尾の細き
手毬花色とりどりの電車道(まさ)
情景は見えるのだが、「電車道」は相撲用語なので、
線路とか鉄路を使う方がいい。
(参考)線路沿い色とりどりの手毬花
鬼灯を頬張る遠き海青し(南行)
鬼灯市は夏の季語だが、鬼灯となると秋の季語となる。
ただ鬼灯の赤と海の青の取り合わせがきれいなので
秋の句として出すとよい。
また鬼灯を鳴らすのは「頬張る」のではなく、
「含む」或いは「鳴らす」ではないか。
(参考)鬼灯をふふむ遥かな海青し
紫陽花や裏木戸まはり華やかに(良)
光景はわかるのですが、すべて言ってしまっているので、
読み手に想像の余地を与えない。
(参考)紫陽花の裏の木戸より出かけけり
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第30回「蘇鉄の会」互選結果 ( )内数字は得票数・講師選含む
兼題:「鬼灯市」または「四満六千日」
四万六千日父母に供える米を研ぐ (3) 真智子
四万六千日懐かしきかな大山寺 (0) 良
験直し鬼灯市に出かけんか (4) 博石
空仰ぎ鬼灯市に父母想う (0) 小百合
ほおずきや明かりを灯す夜市かな (0) まさ
鬼灯を頬張る遠き海青し (1) 南行
三和土には鬼灯市のみやげあり (2) 真砂
鬼灯市浴衣で繰り出す江戸ごよみ (1) 勝利
当季句:夏
風薫る羽織にリュックの彼行く (0) 真智子
夏空や話題満載同窓会 (1) 良
雨上がり笑顔の空や合歓の花 (2) 博石
短夜や覚めて幾度も時計見る (1) 小百合
若竹や衣脱ぎ捨て天を突く (4) まさ
正宮に立つ身をよぎる夏の風 (1) 南行
朝日射す植田の水面風渡る (1) 真砂
控え目のアロハシャツ来て外出す (3) 勝利
大慌て逃げる蜥蜴の尾の細さ (2) 真智子
紫陽花や裏木戸まわり華やかに (1) 良
くちなしに顔近づけて香り嗅ぐ (1) 博石
さざ波の代田に揺るる山の影 (5) 小百合
手毬花色とりどりの電車道 (3) まさ
万緑の上雲白く流れゆく (2) 南行
鬼百合の群れてそよぐや浄瑠璃寺 (0) 真砂
遠き日のラジオ体操盛夏待つ (0) 勝利
ゆらゆらり藪蚊は腫れた腹かかえ (2) 真智子
梔子や香満々雨上がり (0) 良
牡丹濡れガラスのような花弁かな (2) 博石
日照り雨長靴履く子のはしゃぐ声 (0) 小百合
遊び草風と戯れ右左 (0) まさ
空海や開眼の月ジオパーク (1) 南行
ジャカランダ香りほのかに遍路道 (3) 真砂
帰省して夏座布団を折って寝る (2) 勝利
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第31回「蘇鉄の会」ご案内
開催日時:2024年10月11日(金)13:00~(予定)
選評講師:城下洋二先生
御 題:兼題「月」1句
当季(秋)雑詠3句 計4句
投句締切:2024年10月1日(火)
投句方法:兼題1句と当季雑詠3句の計4句
※あらかじめメールにて上記締切までに俳句の投稿をお願いします。
下記メールアドレス迄お送り下さい。
nagao@work21.co.jp
ワード文書でファイル添付又はメールべた打ちでもOK。
開催場所:清澄庭園「涼亭」
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(2024/04/14) 担当:長尾 小百合(事務局・会計担当 30期)
俳句同好会 第30回「蘇鉄の会」報告
令和六年四月十三日(土)
新宿御苑で春の句会を開催しました。
今年は桜の開花が遅かったため、まだ花がたくさん残っていて、
「これで見納め」とばかりに、大勢の方が新宿御苑を訪れていました。
ポカポカ陽気の中、八重咲の桜「一葉」と
「ソメイヨシノ」の大木の間に腰を下ろし
お弁当を広げてお花見を楽しんだあと、
青空のもとでの句会となりました。
今回の投句参加者11名(含む講師)、投稿句は全41句でした。
兼題:「朧月・朧月夜」一句
季題:三句
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【城下洋二先生投句】
句座果てて宴の窓のおぼろ月
風のなか屈めばつくしつくしかな
日を浴びて芍薬の芽の燃え上がる
初花や空にぽかりと白き富士
城下洋二
令和六年四月
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【選句と選評】 講師 城下洋二
<特選>
手を幹に花と語りし母は逝き(真智子)
手を幹にあて桜と交感する母上の姿を、桜の季節になると思い出す作者の
母上の対する気持ちが伝わってきます。最後を「逝き」としたことにより
死の悲しみが今も続いているのが感じられます。
ぴかぴかの制服うれし風光る(小百合)
新調の制服を着た新入生の気持ち或いは悦ぶ新入生を見ている
親の気持ちが素直に読まれています。季語の斡旋もいいです。
筆の花取りて夕餉の菜一つ(まさ)
土筆を夕食のおかずに加えるという田舎暮らしが見えてきます。
「取りて」は「採りて」と表記すべきでしょう。
願わくばキーウの街にリラの花(博石)
戦争が終わり、キーウの市民がリラの花を愛でるような
平和が来ることを私も願っています。
平和への希求が直接的でないとこらがいいと思います。
「願わくば」は文語表記では「願はくば」
<並選>
“NO WAR”は世界の願い月おぼろ(博石)
スローガン的な句作りは言いたいことが強すぎて、
詩情に欠けることが多いです。この句の場合季語を「亀鳴く」という
空想的なものに変えることにより、世界中が平和を願っても
現実には平和が遠いことが強く浮かび上がると思います。
(参考)“NO WAR”は世界の願い亀の鳴く
朧月フォーレの調べ鎮魂歌(真砂)
朧月とレクレイムの取り合わせは面白いと思いますが、
調べと鎮魂歌は重複するので調べは不要です。
フォーレのレクレイムが胸にこだましたとしてはいかがですか。
(参考)朧月胸にフォーレの鎮魂歌
朧月鍵穴探す老夫婦(良)
年取ると、慣れた玄関の鍵でも暗ければうまく鍵が入らない
ことがあります。滑稽味があって面白い句です。
花衣水上バスの二人旅(龍彦)
ちょっとおしゃれして二人で花見の水上バスに乗り込む、
年配のご夫婦か恋人か、読者の想像が膨らみます。
山がすみ遍路はゆきぬ沈下橋(勝利)
情景は目に浮かびますが、霞も遍路も春の季語です。
「ゆきぬ」と完了形にしていますが、現在の情景の方が臨場感があります。
(参考)山けぶり遍路の歩む沈下橋
堀端の一分二分咲き風光る(南行)
一分咲きだけでは何の花かわかりませんので、
きちんと「花(桜)」の語を入れましょう。また花を入れると
「風光る」が季重なりになるので次のようにしてはいかがでしょう。
(参考)堀端の風きらきらと花三分
梅が香の兆しやいずこ旅の宿(徹)
宿に着いたらどこからともなく梅の香りがしたという情景なので、
「兆しやいづこ」は少し大上段に構え過ぎた感じがします。
もう少し自然な表現の方がいいと思います。
(参考)梅が香のいづこともなく旅の宿
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第29回「蘇鉄の会」互選結果 ( )内数字は得票数・講師選含む
兼題「朧月・朧月夜」
朧月古城に宴有りし時 (3) 真智子
朧月鍵穴探す老夫婦 (3) 良
〝NO WAR〟は世界の願い月おぼろ (2) 博石
街路樹の枝に隠れておぼろ月 (0) 小百合
今宵また朧月夜や影二つ (0) 徹
季は移る垣根の向こうにおぼろ月 (0) まさ
水の音水面に浮かぶ朧月 (1) 南行
朧月フォーレの調べ鎮魂歌 (2) 真砂
ここまでは狐狸に化かされおぼろ月 (1) 勝利
当季句
おぼつかぬ口笛競う初音かな (1) 真智子
春うららテニス三昧昼下がり (0) 良
九十九(つづら)坂姿見えずも初音かな (0) 博石
蒲公英の割れ目に生える健気さや (1) 小百合
家路へと雪青白し月明り (0) 徹
カリ渡る竿やカギやの春の空 (0) まさ
花衣水上バスの二人旅 (1) 龍彦
堀端の一分二分咲き風光る (2) 南行
雪柳花枝先に子犬の眼 (0) 真砂
山がすみ遍路はゆきぬ沈下橋 (4) 勝利
菜の花や映える入日の峰の雲 (2) 真智子
花見酒若かりし頃ウイスキー (0) 良
願わくばキーウの街にリラの花 (4) 博石
遅咲きの花待ちわびて桜餅 (0) 小百合
梅の香の兆しやいずこ旅の宿 (2) 徹
末黒野の芒の芽生え青々と (0) まさ
鳥達も花から花へ風薫る (0) 南行
雨上がり城郭むくり夕桜 (2) 真砂
ベランダのひよどりの背に薄桜 (0) 勝利
手を幹に花と語りし母は逝き (4) 真智子
春の雨希望旅立ち高校生 (0) 良
風そよぐてんとう虫を道連れに (0) 博石
ぴかぴかの制服うれし風光る (2) 小百合
老いの道辿り辿りて梅の花 (0) 徹
筆の花取りて夕餉の菜一つ (4) まさ
白波に川鵜首出す春の川 (1) 南行
ぼんぼりに花降る参道夜の風 (3) 真砂
ひんやりと庫裡の奥の甘茶かな (2) 勝利
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第30回「蘇鉄の会」ご案内
開催日時:2024年7月6日(土)12:30~(予定)
選評講師:城下洋二先生
御題:兼題「鬼灯市」または「四満六千日」1句
当季(夏)雑詠3句 計4句
投句締切:2024年6月28日(金)
投句方法:兼題1句と当季雑詠3句の計4句
※あらかじめメールにて上記締切までに俳句の投稿をお願いします。
下記メールアドレス迄お送り下さい。
nagao@work21.co.jp
ワード文書でファイル添付又はメールべた打ちでもOK。
開催場所:小石川後楽園(予定)
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(2024/01/20) 担当:長尾 小百合(事務局・会計担当 30期)
俳句同好会 第28回「蘇鉄の会」報告
令和六年一月十三日(土)
新年会を兼ねて、築地7丁目にある「懐石ふじ木」にて句会を開催しました。
きめ細かなおもてなしを受けながら
和食の真髄が感じられるお料理をのんびりといただいていたら
句会の時間が短くなってしまい
後半は聖路加タワーのカフェに移動しての開催となりました。
今回から、家安勝利さん(25回)が仲間に加わってくださり
蘇鉄の会が一層賑やかになりそうです。
今回の投句参加者10名(含む講師)、投稿句は全39句でした。
兼題:「外套(コート・オーバーも可)」一句
季題:三句
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【城下洋二先生投句】
賀状書くむかし版画を彫りしこと
鬚ひたし赤子のやうに柚子囲む
人気なき道を浄めて年迎ふ
空見上げ外套の襟立てにけり
城下洋二
令和六年一月
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【選句と選評】 講師 城下洋二
≪兼 題≫「外套(コート・オーバー)」
<特選>
新しき外套纏ひて旅立てり
希望に満ちた新たな旅立ちを想起させる。
<並選>
払ひてもなほ雪降りかかるコートかな
霏々と雪降る情景が目に浮かびます。ただ「雪降りかかる」より
「雪積もる」の方がこの場合ふさわしい気がします。
(参考)払ひてもすぐ雪積もるコートかな
外套を小脇に抱へ右左
外套を着て出たものの、暖冬で、暑さのあまり小脇に抱え、
右往左往したという滑稽な日常の一コマ。
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≪当季句≫(冬)
<特選>
島陰にのたりと重き冬の海
日陰になった鈍色の冬の海が見えてきます。
よちよちの母の手を取り初薬師
母の健康祈願でしょうか。初薬師の季語が生きています。
冬空を見上ぐ入院のベッドより
低く曇った冬の空を病院のベッドから見上げている作者の
不安な気持ちが端的に表現できている。
<並選>
遠浅の故郷の海や初日の出
「遠浅」で穏やかな新春の海の情景が目に浮かびます。
鷽替へを待つ木の鳥のとぼけ顔
取り換えられる鷽は誰の手に渡るかわからない、
ひょうひょうとしていないと、やっておれないですね。
添書に賀状仕舞と相和する
最近は賀状仕舞の年賀状が増えてきましたが、
「相和する」は意味が少しずれているように思えます。
ここは単純に「記す」としたほうがいいのではないですか。
(参考)添書に賀状仕舞と記しあり
歳末や夢に夢見る宝くじ
リズムがいいです。正夢になればいいですね。
芝生踏みかすかな音に冬気配
枯芝を踏んだ感触に冬の気配を感じたという繊細な句。
上五の「芝生踏み」ではなく「芝生踏む」と
一回切れを入れたほうがリズムが良くなります。
(参考)芝生踏むかすかな音に冬気配
二階まで香りを寄越す枇杷の花
枇杷の花は芳香を放ちます。
句は「寄越す」と枇杷を擬人化して読んでいますが、
ここは素直に「漂ふ」としたほうがいいと思います。
(参考)二階まで香り漂ふ枇杷の花
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第28回「蘇鉄の会」互選結果 ( )内数字は得票数・講師選含む
兼題「外套(コート・オーバー)」
外套よ包め十五の彼を父母失きを (2) 真智子
外套を吊るしたままに温暖化 (1) 博石
払いてもなお雪降りかかるコートかな (2) 小百合
温暖化厚手コートのお蔵入り (2) 徹
すれ違う追い風よういの冬コート (0) まさ
外套を小脇に抱え右左 (1) 南行
オーバーコート着て後姿は父に似て (1) 孝枝
新しき外套纏ひて旅立てり (2) 真砂
外套よゴーゴリ―の風近く来る(初回投句により互選なし)勝利
古外套オペラの帰りに口ずさむ(初回投句により互選なし)勝利
外套や木の芽時にも居残りて (初回投句により互選なし)勝利
当季句
警備員笑顔で帰る師走かな (1) 真智子
二階まで香りを寄越す枇杷の花 (3) 博石
枯木立すきまに遠く山の影 (0) 小百合
おお団扇お堂すっきり煤払い (0) 徹
掛乞いの鈴の音響く歳暮るる (0) まさ
ふわふわの毛布で包むチワワかな (0) 南行
若き日のセーター解きて糸となる (0) 孝枝
白壁に寒椿咲く月あかり (1) 真砂
遠浅の故郷の海や初日の出 (2) 真智子
面白き本に出合いて冬ともし (1) 博石
鷽替えを待つ木の鳥のとぼけ顔 (4) 小百合
添え書きに賀状仕舞と相和する (3) 徹
小春日や我が物顔の縁の猫 (3) まさ
老女曳く吐く息白き子犬かな (1) 南行
セーター着ていつしか少女の乙女さぶ (0) 孝枝
島陰にのたりと重き冬の海 (3) 真砂
シリウスや朽葉の下の息吹かな (0) 真智子
フラメンコ衣装の赤や秋の果て (0) 博石
よちよちの母の手を取り初薬師 (3) 小百合
寿ぐや災禍重なり淑気断つ (2) 徹
歳末や夢に夢見る宝くじ (2) まさ
芝生踏みかすかな音に冬気配 (3) 南行
冬空を見上ぐ入院のベッドより (1) 孝枝
柊の花を飾りて茶を点てる (0) 真砂
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第29回「蘇鉄の会」ご案内
開催日時:2024年4月13日(土)12:00~(予定)
選評講師:城下洋二先生
御題:兼題「おぼろ月」または「おぼろ月夜」1句
当季(春)雑詠3句 計4句
投句締切:2024年4月5日(金)
投句方法:兼題1句と当季雑詠3句の計4句
※あらかじめメールにて上記締切までに俳句の投稿をお願いします。
下記メールアドレス迄お送り下さい。
nagao@work21.co.jp
ワード文書でファイル添付又はメールべた打ちでもOK。
開催場所:新宿御苑(予定)
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「蘇鉄の会」参加を随時受付けています。
上記メールアドレスにお申込み下さい。
年会費:5,000円(振込先は別途ご案内)
(2023/10/13) 担当:長尾 小百合(事務局・会計担当 30期)
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俳句同好会 第27回「蘇鉄の会」報告
令和五年十月七日(土)
清澄白河駅を起点に、芭蕉の史跡めぐりをしながら吟行を行いました。10月に入ったにもかかわらず、当日は汗ばむような陽気で、急遽「秋麗(あきうらら)」の兼題の枠を外して自由に句を詠むことに。1時間ほどのちに森下文化センターで落ちあい、句会を開きました。
今回の投句参加者10名、当日の句会参加者は7名(含む講師)、投稿句は全40句でした。
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吟行(当季雑詠):一句
季題:三句
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■城下洋二先生投句
列車待つ支線のホーム赤とんぼ
新豆腐古民家の梁黒々と
アメ横の呼び声太き残暑かな
城下洋二
令和五年十月
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【選句と選評】 講師 城下洋二先生
≪当季句≫(秋)
<特選>
初狩か小さき蟷螂忍び来る 真智子
小さな蟷螂が寄ってくるのを、初めての狩りと見立てたところが面白い。
大仏にそぼ降る雨や秋彼岸 博石
秋雨に濡れた大仏を見るとひとしお秋の深まりを感じます。
秋雨や槇の葉先に光る露 南行
槇の葉の細い先のしずくに目を向けたところがいいです。
それで秋雨が荒々しいものでなく小糠雨のような 静かな雨と分かります。
<並選>
桐の花空いつぱいの花火かな 博石
情景は目に浮かぶのですが、桐の花は地味な色で晴れの日も曇りの日も
空に溶けてしまいそうな色なので、
花火のたとえがいいかどうか私には疑問があります。
荒れた田に薄はびこる双葉町 小百合
福島原発事故の後の情景を呼んだのはいいと思います。
ただ薄がはびこった田んぼは荒れた田なので、「荒れた」は不要です。
(参考)田いちめん薄のおおふ双葉町
引き潮に乗りて宮島夏帽子 徹
情景が目に浮かびますが、引き潮に乗るというのは遠ざかるということでしょうか。
秋蝶の影をリードにペタル漕ぐ 真智子
中七の「影をリードに」が分かりにくいので、
素直に「影を追ひつつ」としてはいかがですか。
(参考)秋蝶の影を追ひつつペダル漕ぐ
遊歩道あんな所に曼珠沙華 良
曼珠沙華は突然花茎が伸びて葉より先に花が咲くので、
あんな所にと言った驚きがあります。素直に読んでいるので好感が持てます。
朝六時銀杏ひろい散歩道 良
この句の主役は「散歩道」ではなく「散歩」なので、それを明確にしましょう。
銀杏ひろいをしながらののんびりした散歩なので、
下五を字余りにしてその感じを出すのはいかがでしょう。
(参考)朝六時銀杏ひろひひろひ散歩
ピンク指す秩父の山は蕎麦の花 真砂
蕎麦の花は白が一般的ですが、赤みがかった花もあります。
まだ青々とした秩父の山の一部に蕎麦の花のピンクが
差し色のように見えるという光景は面白いです。
ただ「ピンク指す」はわかりにくいので添削してみました。
(参考)蕎麦の花秩父の山に紅をさし
秋の夜や静かに響く虫の声 まさ
秋と虫が季重なりです。「秋の夜」を参考のようにすると
虫に焦点が当たり、季重なりも避けられます。
(参考)闇深し静かに響く虫の声
喉笑う初値のさんま鮨一貫 南行
さんまの初物のお鮨、いかにもおいしそうです。
ただ「初値のさんま」ではなく初競りのさんまではないでしょうか。
参考のようにするとリズムもよくなります。
(参考)喉笑ふ初競りさんま鮨一貫
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第27回「蘇鉄の会」互選結果 ( )内数字は得票数
吟行による当季雑詠
秋麗ポトンと一つ種の落つ 真智子
秋麗家族総出で栗拾い 良
秋麗や空青々と風は澄む 博石
川辺りの風心地よき秋日向 小百合 (3)
下町の史跡めぐりや秋麗 徹 (1)
秋麗一雨ごとに風涼し まさ
秋麗アゲハ巣立ちて部屋広し 龍彦 (1)
秋涼し想いは巡る芭蕉庵 南行
紅白の萩そよぎたる芭蕉庵 真砂
秋風や川上る船下る船 城下先生(2)
当季句
蟷螂が足先に着地風かすか 真智子 (1)
朝六時銀杏ひろい散歩道 良
桐の花空いっぱいの花火かな 博石 (1)
荒れた田に薄はびこる双葉町 小百合 (2)
引き潮に乗りて宮島夏帽子 徹
秋風に吹かれてそよぐ名残花 まさ
療養跡の池のほとりに立ち尽くす 龍彦
薄明り浮かれ夜道の虫の闇 南行
ピンク指す秩父の山は蕎麦の花 真砂 (2)
秋蝶の影をリードにペダル漕ぐ 真智子
遊歩道あんな所に曼珠沙華 良
曼珠沙華馬頭観音寄添ひて 博石 (1)
葉に影を落とす蜻蛉の羽模様 小百合 (3)
甲子園世紀越へたり夏飾る 徹 (1)
秋の夜や静かに響く虫の声 まさ
鹿の瞳(め)に映る我らは異邦人 龍彦
喉笑う初値のさんま鮨一貫 南行 (4)
古希超えて伴に花咲く弁慶草 真砂
初狩か小さき蟷螂忍び来る 真智子 (3)
新米や故郷の味懐かしき 良
大仏にそぼ降る雨や秋彼岸 博石 (1)
ビルとビル隙間に野菊の花揺れて 小百合 (1)
夏日射るストの静けさ時遷る 徹
空澄みて色も香りも衣替え まさ (1)
昔むかし肱川颪(おろし)がありしとか 龍彦
秋雨や槇の葉先に光る露 南行 (2)
彼岸花見つけた子らの高き声 真砂 (1)
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第28回「蘇鉄の会」ご案内
開催日時:2024年1月13日(土)11:30~16:30
選評講師:城下洋二先生
御題:兼題「外套(コート、オーバーも可)」1句
当季(冬)雑詠3句 計4句
投句締切:2024年1月5日(金)
投句方法:あらかじめメールにて上記締切までに投句をお願いします。
下記メールアドレスまでお送りください。
nagao@work21.co.jp
ワード文書でファイル添付又はメールべた打ちでもOK。
開催場所:懐石ふじ木
〒104-0045 東京都中央区築地7-4-4 サンクレスト築地1F
https://www.fujiki-kaiseki.net/
集合場所:フェリック社
東京都中央区築地3-12-3 WELL 2ビル2階
2024年1月13日(土)11:50集合
当日会費:5,000円(昼食代・会場費含む)
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「蘇鉄の会」参加を随時受付けています。
上記メールアドレスにお申込み下さい。
年会費:5,000円(振込先は別途ご案内)
(2023/07/13) 担当:長尾 小百合(事務局・会計担当 30期)
担当:長尾小百合(事務局:30期)
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俳句同好会 第26回「蘇鉄の会」報告
令和五年七月八日(土)
江戸時代に発祥をもつ花園「向島百花園(墨田区)」内の御成座敷にて、第26回「蘇鉄の会」を開催いたしました。句会を終えたあとは園内を散歩。オミナエシやキキョウなど、早くも秋の兆しあり。点在する句碑にも足を止め、風情を楽しむひと時を過ごしました。
今回の投句参加者10名(含む講師)、投稿句は全40句でした。
ご挨拶:長島公子さんから、事務局を引き継ぐことになりました長尾小百合と申します。今後はこちらのブログへの投稿も担当させていただきます。どうぞ、よろしくお願いいたします。長島さんには、長い間事務局を務めていただき、大変なご尽力とご貢献をいただきましたことに深く感謝申し上げます。
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兼題:「噴水」一句
季題:三句
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■城下洋二先生投句
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【選句と選評】 講師 城下洋二先生
≪兼 題≫「噴水」
<特選>
噴水の止まりしのちの高さかな 博石
噴水が止まった瞬間、今まで吹き上げていた空の高さに
改めて気づいたという、写真とは違う、俳句でしか
表現できない一瞬を切り取っていて、素晴らしい。
<並選>
噴水や水玉光りてシャンデリア まさ
中七の「水玉光りて」とすると説明的になるので
「光る水玉」とすると中七以下
3,4,5,と句にリズムが出てきて、説明的でなくなる。
(参考)噴水や光る水玉シャンデリア
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≪当季句≫(夏)
<特選>
蛍狩りつなぐ老母の手の細く 小百合
蛍狩りの暗がりで久しぶりに母の手を取った時、
いつの間にか年老い、細くなった母の手に驚いたという句だが、
母の老いを手の細さで具体的に表現したところがいい。
中七の「つなぐ」より「取りし」としたほうが
瞬間の情景となるのではないか。
(参考)蛍狩り取りし老母の手の細く
緑陰に沈みて深き息を吸ふ 真智子
感覚的な句だが、緑陰の感じがよく出ている。
紫陽花や論語繙く雨の午後 博石
晴耕雨読でしょうか。
論語という古典と紫陽花の取り合わせがうまい。
<並選>
夏空やテニス大会日曜日 良
所謂三段切れとなって、句のリズムがぎくしゃく
しているので、語順を変えたほうがよい。
(参考)日曜のテニス大会夏の空
梅雨寒や友と熱燗長談義 徹
熱燗と梅雨寒と季跨りになっているが、
梅雨寒の季語の方が主となっているので
この句の場合問題がない。旧友とのしみじみとした
交流が目に浮かぶ。
雨ごとにぐいぐい伸びる葡萄蔓 真砂
梅雨どきの葡萄の生命力を素直に表現している。
雲の間に大山蓮華開かんと 博石
純白の大山蓮華のつぼみが曇天に凛と咲きかけている
情景が目に浮かぶ。青空でなく曇り空としたことで
余計風情が出ている。
我が庭の主と成りに来若き蟇蛙 真智子
若い蟇蛙が庭の主になり来たと言いたいのだろうが、
表現が窮屈。ここは蟇蛙が庭の主になったと
言い切ったほうが表現に無理がない。
(参考)我が庭の主と成りたる若き蟇
梅雨晴れ間ボタンクサギの紅つぼみ 龍彦
情景は良く見えるが、クサギは実も花も秋の季語。
花の名前は季語であることが多いので注意が必要。
緑なす木漏れ日浴びていで湯かな 南行
「浴びて」が少し説明的なので、
「揺れる」として風の感じを出したほうがいいのではないか。
(参考)緑濃き木漏れ日揺るるいで湯かな
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第26回「蘇鉄の会」互選結果 ( )内数字は得票数
兼題「噴水」
噴水に悲鳴飛び出すガードマン 真智子
噴水や地上か地下か待ち合わせ 良
噴水の止まりしのちの高き空 博石 (3)
噴水のダンスにしばし時忘れ 小百合 (1)
噴水や正にショウなりラスベガス 徹 (1)
噴水や水玉光りてシャンデリア まさ
噴水や繰り出す水技昼も夜も 龍彦
舞い踊る噴水しぶき堀の中 南行 (1)
噴き上がる水に燥ぐや子らの声 真砂 (3)
当季句
∞(無限大)に三回くぐりし茅の輪の懐かしき 真智子(1)
夏空やテニス大会日曜日 良
鐘響く亀が昼寝の菖蒲園 博石 (3)
蛍狩りつなぐ老母の手の細く 小百合 (3)
梅雨寒や友と熱燗長談義 徹 (2)
梅雨さなか傘の花咲くゼブラゾ~ン まさ (1)
青梅の三つ四つ落ちて猫止まる 龍彦 (2)
雨上がり蒼天仰ぐ木槿かな 南行 (1)
雨ごとにぐいぐい伸びる葡萄蔓 真砂 (1)
緑陰に沈みて深き息を吸う 真智子 (2)
日が落ちて夜空に上がる花火かな 良
雲の間に大山蓮華開かんと 博石 (1)
久方の帰省の庭に瓜簾 小百合 (2)
種と人絆を結ぶ夏野菜 徹
街燈の灯りに滲む虹の色 まさ
柿若葉煎茶のかほり肩ゆるむ 龍彦 (1)
烏鳴く姫紫陽花が咲いた朝 南行
賑わいの土曜夜市や大街道 真砂 (1)
我が庭の主と成りに来若き蝦蟇 真智子
夏祭り夜店賑わい老夫婦 良 (1)
紫陽花や論語繙く雨の午後 博石 (2)
遺跡にて草のいきれに過去偲ぶ 小百合
避暑を兼ねゴルフ三昧かの時代 徹
黒南風や湧きてザワザワ吹きにけり まさ
梅雨晴れ間ボタンクサギの紅つぼみ 龍彦
緑なす木漏れ日浴びていで湯かな 南行 (2)
田植え後の水満ち満ちて苗そよぐ 真砂 (2)
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第27回「蘇鉄の会」ご案内
開催日時:2023年10月7日(土)11:30~16:30
選評講師:城下洋二先生
御題:兼題「秋麗(あきうらら)」1句(吟行)
当季(秋)雑詠3句 計4句
投句締切:2023年9月30日(土)
投句方法:兼題は吟行となります。
当季雑詠3句につきましては
あらかじめメールにて上記締切までに投稿をお願いします。
下記メールアドレスまでお送りください。
nagao@work21.co.jp
ワード文書でファイル添付又はメールべた打ちでもOK。
開催場所:隅田川散歩(吟行)→芭蕉記念館見学
→森下文化センター(句会)
集合場所:都営大江戸線・半蔵門線「清澄白河駅」改札付近
2023年10月7日(土)11:30集合
当日会費:3,000円(昼食代・会場費含む)
…………………………………………………………………………………………
「蘇鉄の会」参加を随時受付けています。
上記メールアドレスにお申込み下さい。
年会費:5,000円(振込先は別途ご案内)
(2023/04/09) 担当:長島 公子 (事務局、19期)
俳句同好会 第25回「蘇鉄の会」報告
令和五年四月八日(土)、早くも新緑瑞々しい神代植物公園※(調布市)にて、当会初めての「吟行」を行いました。
今回の投句参加者11名(含む講師)、投稿句は全43句でした。
今回、北高同窓生(18期)1名が体験参加され、入会して下さいました。
兼題:「囀り」一句
季題:三句
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曇天を割って囀り降って来し
木の芽張る窓辺に熊のぬひぐるみ
山鳩の歩めば大地芽吹きゆく
木瓜は満開うかうかとしてをれぬ
城下洋二
令和五年四月
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【選句と選評】 講師 城下洋二
≪兼 題≫
吟行の兼題「囀り」
<特選>
囀りや諍いもあり恋唄も 龍彦
<並選>
囀りや時報の鐘に大合唱 小百合
さへずりにほゝえみ居たる悟堂かな 真砂
(悟堂…園内の林の一角に日本野鳥の会の創始者・中西悟堂の銅像がある。)
…………………………………………………………………………………………………
≪当季句≫(春)
<特選>
一点に光あつめて福寿草 龍彦
(講評)福寿草に光が当たり黄金色に輝く様子が見事にとらえられています。
ただ福寿草は早春の花ですが、季語としては新年の季語となります。
卒業歌練習の声校舎より 孝枝
(講評)卒業の光景ではなく、その準備の段階を句にしたところが新鮮です。
いかなごの煮られてへのへのもへじかな 博石
(講評)くぎ煮の様子をひょうきんに表現して、面白い。
いつの日も心安らぐ桜かな 良
(講評)桜に対して人それぞれの思いがありますが、作者はいつも安らぎを
感じている、それを素直に表現されて素晴らしい句になっています。
蕗味噌を味わう齢酒美味し 龍彦
(講評)蕗味噌など若い時はあまり美味しいと思はなかったのですが、
年取るとともにその味わいが分かってきます。酒の味もまた。
<並選>
花疲れ吉野の山の七曲り 博石
(講評)花疲れは花見で歩き疲れた様子を表しますが、花疲れと七曲りとを
取り合わせますと、所謂付き過ぎな感じになります。ここでは季語
を「花霞む」「飛花落花」などとしてはいかがでしょうか。
(添削例)花霞む吉野の山の七曲り
花盛り小枝くわえた烏かな 南行
(講評)花盛りを巣作りにいそしむ鴉が小枝くわえて飛んでゆく光景は自然
の営みを感じる景の一つです。ただ口語と文語が入り混じっている
ので、整理しましょう。
(添削例)花盛り小枝くはへし烏ゆく
満作に風吹きぬけり散歩道 徹
(講評)満作の花は本当に春を感じさせますが、また同時に早春の冷たい風
にも吹かれます。
柔らかな雨降る春や花誘う まさ
(講評)「春」と「花」は季重なりなので語順を変えて避けましょう。
(添削例)花誘ふやわらかな雨降って来し
(参考)
雨上がり久しき顔の花見かな 小百合
(講評)作者の読みたいことはコロナ禍で外出自粛していた人たちが、花見
で久々に顔を合わせたことですね。俳句は十七文字なので言いたい
ことに焦点を絞って詠むことが大切です。そうしないと焦点がぼや
けたり、説明的になったりします。
(添削例)久々に会う人ばかり桜狩り
道灌の越生晴れ野に山吹草 真砂
(講評)道灌と越生、道灌と山吹の故事を織り込んでいますが、ちょっと知
識過剰気味です。また「晴れ野」というのは造語なので避けたい。
越生と道灌が関係あるというのはそんなに有名ではなく、また山吹
の故事はいたるところに比定地がり、例えば新宿区の山吹町など、
自分のためだけに作句ならいいのですが、発表となると故事がそれ
なりの認知度がないと伝わりませんので気を付けてください。
(添削例)晴れ渡る越生の野には山吹草
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第25回「蘇鉄の会」互選結果 ( )内数字は得票数・講師選含む
兼題「囀り」
囀りや諍いもあり恋唄も (3) 龍彦
囀りて時報の鐘に大合唱 (2) 小百合
囀りや友と語らふ森の中 (1) 博石
風に乗り囀る主やいずこかな (1) まさ
亡き友と調べたあの日の囀りに (1) 真智子
曇天を割って囀り降って来し (1) 洋二
囀りに憂ひは晴れし森の精 (1) 徹
さへずりに微笑み居たる悟堂かな (1) 真砂
囀りや煩き程に冴え渡る 良
囀りて騒ぐ梢枝やそよぐ風 南行
当季句
花疲れ吉野の山の七曲り (4) 博石
一点に光あつめて福寿草 (4) 龍彦
いかなごの煮られてへのへのもへじかな (3) 博石
しきりなる落花にむせぶ地蔵様 (2) 博石
蕗味噌を味わう齢酒美味し (2) 龍彦
花盛り小枝くわへた烏かな (2) 南行
満作に風吹き抜けり散歩道 (2) 徹
やわらかな雨降る春や花誘ふ (2) まさ
道灌の越生(おごせ)晴れ野に山吹草 (2) 真砂
いつの日も心安らぐ桜かな (1) 良
卒業歌練習の声校舎より (1) 孝枝
花散りて緑はつらつ桃の枝 (1) 小百合
百(もも)年(とせ)とこども図書館花の舞ふ (1) 真砂
春の雨旅立つ友の寂しさよ (1) 良
雨上がり久しき顔の花見かな (1) 小百合
藏澤の竹の絵古し春日差し (1) 孝枝
目に沁みる若葉の匂ひ湯のけむり (1) 南行
時満ちて旅にしあれば菜種梅雨 (1) 徹
巣立ちあり足踏みありの湯島かな (1) 真砂
限り無く樹木の芽吹く神の森 孝枝
早春や願い叶ひて深大寺 良
雨上がり笑顔が並ぶ花の雲 南行
三年に及ぶマスクや杉の花 徹
山の春緑のトンネルくぐる君 まさ
「嘘っそう」と早春の朝顔濃紫 龍彦
春陽気ブーツ仕舞いて日傘出す 小百合
春灯や霞む街並み絵のごとし まさ
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第26回「蘇鉄の会」ご案内
開催日時:2023年7月8日(土)13:00~16:30
選評講師:城下洋二先生
御題:兼題「噴水」1句
当季(夏)雑詠3句 計4句
投句締切:2023年7月1日(土)
投句方法:兼題1句と当季雑詠3句の計4句
※あらかじめメールにて上記締切までに俳句の投稿をお願いします。
下記メールアドレス迄お送り下さい。
sato-nagashima@coast.ocn.ne.jp
ワード文書でファイル添付又はメールべた打ちでもOK。
開催場所:向島百花園
集合場所:東武伊勢崎線「東向島駅」7月8日(土)12:30集合
( 向島百花園へ直接行く場合は事前にお知らせください。)
当日会費: 3,000円(昼食代含む)
「蘇鉄の会」参加を随時受付けています。
上記メールアドレスにお申込み下さい。
年会費:5,000円(振込先は別途ご案内)
(2023/01/24) 担当:長島 公子 (事務局、19期)
俳句同好会 第24回「蘇鉄の会」報告
大寒を控えた令和五年一月二十一日(土)、築地にて予定しておりました第24回「蘇鉄の会」は、急遽、複数の会員の都合によりWEB上での開催となりました。
今回の投句参加者9名(含む講師)、投稿句全36句でした。
兼題:「七草」または「七草粥」一句
季題:三句
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子の作る七草粥をたなごころ
目つむれば星降る夜の柚子湯かな
初晴や八幡様の幟旗
まさおなる空より御慶大鴉
令和五年一月
城下洋二
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【選句と選評】 講師 城下洋二
≪兼 題≫
「七草」または「七草粥」一句
<特選>(選者:城下洋二)
七草や畦道あゆむ老夫婦 (作者) 良
(講評)七草粥の若菜を摘みに畦をゆく老夫婦。
情景が良く見え、農村の素朴な慣習が偲ばれる。
<並選>(選者:城下洋二)
七草や数へる指に老いを知る (作者) 龍彦
(講評)昔なら躊躇なく言えたのに七草の名前を指折り数えて いる自分に気付いて、老いを改めて感じたという句意だが、老年世代には「あるある」である。
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≪当季句≫(冬)
<特選>(選者:城下洋二)
初場所や酒酌み交はす友がをり (作者) 南行
(講評)桟敷席でもテレビの前でもよいが、相撲を見ながら友と杯を重ねる幸福をしみじみ感じている。年を取ると一層そう思う。
松代の地下壕出れば冬紅葉 (作者) 龍彦
(講評)松代大本営跡の地下壕、敗戦、強制労働などの暗い記憶から、眼前の平和で鮮やかな冬紅葉、その対比が素晴らしい。
大寒や子犬の散歩朝六時 (作者) 良
(講評)大寒のしかも一日で最も寒い朝の六時の散歩、可愛い子犬のためなら仕方ない。愛情あふれる一句。
<並選>(選者:城下洋二)
年の瀬や日に日に重し朝刊の (作者) 徹
(講評)年の瀬になると新聞がだんだん分厚くなるのを句にしたのであろう。
表現としては倒置法にせず、参考のように素直に表現した方が
無理がない。
(参考)朝刊の日に日に重し年詰まる
友情のなごりのごとき賀状来る (作者) 孝枝
(講評)賀状のみの交流は確かに友情のなごりみたいである。
私は息災確認と思っているが。
母想ふ手向けたきや冬リンゴ (作者) まさ
(講評)句意は明確なのだが、「手向ける」と言えば母を思っていることに
なるのでそこを整理して次のようにした方がすっきりするのではないか。
(参考)手向けけり母の好物冬リンゴ
冬木立空飛ぶ凧を絡め採る (作者) 博石
(講評)凧は春、凧あげは新年と凧はややこしい季語であるが、この場合
冬木立を主たる季語としてとらえたい。
冬木立を擬人化しているところも面白い。
親猫もそつと寄り添ふ冬の朝 (作者) 真砂
(講評)親猫もとあるので作者と子猫そして親猫も寄り添っているのであろう。
寒い朝のほっこりする情景を切り取っている。
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第24回「蘇鉄の会」互選結果 ( )内数字は得票数
兼題「七草」または「七草粥」
七草や薺をたたく囃子かな (2) まさ
七草粥七の調べは母譲り (2) 徹
七草や畦道あゆむ老夫婦 (1) 良
七草の名前すらすら口ずさむ (1) 博石
七草や数える指に老いを知る (1) 龍彦
八日にも七草浮かべ澄ましかな (1) 真砂
七草を子は指折りて覚えけり 孝枝
風強し日向で啜る七草粥 南行
当季句
残されし時を惜しむや烏瓜 (3) 博石
初場所や酒酌み交わす友がをり (3) 南行
友情のなごりのごとき賀状来る (3) 孝枝
朝まだき作務衣揃ひてすす払ひ (2) 徹
伊予柑の香り懐かし届きをり (2) 孝枝
正月や子供二人に孫五人 (1) 良
冬木立空飛ぶ凧を絡め採る (1) 博石
年の瀬や日に日に重し朝刊の (1) 徹
紅白の南天活けて福を呼ぶ (1) まさ
セーターの黙をとうして反抗期 (1) 孝枝
元旦の新聞重し初仕事 (1) 博石
親猫もそっと寄り添ふ冬の朝 (1) 真砂
アメ横に掛け声飛びて年越しぞ (1) 徹
大寒や子犬の散歩朝六時 (1) 良
冬空の月と惑星宇宙ショー (1) 龍彦
鴛鴦の番憩ふや皇居濠 (1) 真砂
松代の地下壕出れば冬紅葉 龍彦
駐車場掃いて掃いても落葉かな 良
母想ふ手向けたきや冬リンゴ まさ
小鴨達浮かぶ日向に風そよぐ 南行
祝成人膝前の指乙女さぶ 龍彦
冬鳥の声につられて鼻歌す まさ
ちゃんちゃんこ腹から覗く嬰児かな 南行
散紅葉花舞ふごとき蒼き空 真砂
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第25回「蘇鉄の会」ご案内
日時:2023年4月8日(土)11:00~16:00
選評講師:城下洋二先生
御題:兼題「囀り(さえずり)」1句(※下記ご参照)
当季(春)雑詠3句 計4句
投句締切:2023年4月1日(土)
投句方法:当季雑詠3句
※あらかじめメールにて上記締切までに俳句の投稿をお願いします。
下記メールアドレス迄お送り下さい。
sato-nagashima@coast.ocn.ne.jp
ワード文書でファイル添付又はメールべた打ちでもOK。
※ 吟行のご案内
1.兼題:「囀り」
2.場所:調布市深大寺
3.集合場所:JR三鷹駅 中央改札口正面 JRみどりの窓口前
4.集合時間:午前10時50分
5.参加費用:昼食代:約2,000円 年会費:5,000円
「蘇鉄の会」参加を随時受付けています。
上記メールアドレスにお申込み下さい。
年会費:5,000円(振込先は別途ご案内)
(2022/10/09) 担当:長島 公子 (事務局、19期)
俳句同好会 第23回「蘇鉄の会」報告
この9月以降、連続して日本列島を襲う台風の合間の奇跡的な快晴の日となった令和4年10月8日(土)、「蘇鉄の会」は、東京都文京区後楽にある小石川後楽園の涵徳亭にて開催いたしました。
今回の投句参加者10名(含む講師)。句会参加者8名。投稿句全40句。
選者及び講師 城下洋二氏の略歴:愛媛県出身。黒田杏子主宰「藍生」俳句会会員。俳人協会会員。藍生新人賞、藍生賞受賞。句集「銀杏坂」
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虫の音の寄せくる坐り机かな
明月草雨の小道をふさぎをり
糸瓜忌を過ぎて小さき糸瓜かな
溢蚊の血を吸ふでなく止まりけり
城下 洋二
令和四年十月
………………………………………………………………………………………………
【選句と選評】 城下洋二 講師
≪兼 題≫
「虫」一切
<特選>
虫の音の止みて庭より夫帰る 孝枝
夜の散歩か朝帰りか、夫婦の間のドラマを感じさせる。
<並選>
夜更けて耳鳴りのよう虫の声 良
虫の音を騒音ととらえる人も多くいるが、俳句ではそんな風に詠む人は少ない。
素直な作者の実感が出ていてよい。
………………………………………………………………………………………………………
≪当季句≫(秋)
<特選>
鳥瞰す富士の裾野の大花野 博石
富士山と花野を一つにして眼下に捉えたところがいい。スケールの大きな句。
秋の虹女王陛下大往生 博石
実際にエリザベス女王が亡くなられた時に虹が懸かっていたが弔句の季語としても適切。
黒田杏子先生から弔句は亡くなった人へ季語贈るという気持ちで作ると教わった。
長き夜や本を片手に夢うつつ まさ
読書の秋だが、年寄りのあるあるである。
ベランダに二百十日の雨の音 龍彦
何気ない日常の一コマも、二百十日と置くだけで嵐の予感を想起させる。
<並選>
マチュピチュの石の廻廊照らす月 博石
こんな光景に出会いたいものだ。
ひつじ田や切り株跳び跳び友の家 まさ
晩秋の田舎の子供の生き生きした様子が目に浮かぶ。
中八になっているが「跳び跳び」というリフレインなので気にならない。
野に出れば至る所に萩の花 良
普段萩が生えているとは気づかないが、花どきになると急に眼に止まる。
そんな日常の驚きが素直に表現されている。
川風や微かに聞こゆ蝉時雨 南行
n 遠く蝉しぐれを聞きながら河辺に休んでいる様子が目に浮かぶ。
来し方や道のり遥か秋彼岸 徹
ふと自分の人生を振り返るとずいぶん遠くまで来たような気がすることがある。
秋彼岸という季語で自分の人生と親或いは遠い祖先と重ねているような感慨に共感する。
<参考>
秋色のキーウの街に空鞦韆 真砂
ウクライナの現状を憂いて詠まれたのだと思うが、映像的にしっかりとしており、
訴えるものがある。ただ空鞦韆は馴染みのない造語なので避けるべき。
(添削例)秋色のキーウ無人のぶらんこが
秋麗や水張り盆に月映し まさ
水に映った月を詠んで、風情があるのだが、秋麗と月が季重なりなっているので、
強い季語の月を残し、添削してみた。
(添削例) 月上る水張る盆に影落とし
手に取りし秋刀魚の細さもの悲し 小百合
今年の秋刀魚は本当に細くて物悲しくなってしまう感じだが、俳句はすべて言い切らず
読み手にも鑑賞の余地を残す方がいい。従って「もの悲し」は言い過ぎ。
(添削例) 手に取りし今年の秋刀魚細かりき
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第23回「蘇鉄の会」互選結果 ( )内数字は得票数
兼題「虫」一切
目を閉じて名句浮かべむ虫の闇 (2) 博石
足とめて虫のひと鳴き次を待つ (2) 小百合
虫の音の止みて庭より夫帰る (2) 孝枝
清涼の目覚めの耳に草雲雀 (2) 真砂
夜更けて耳鳴りのよう虫の声 良
月明かり蔭にひっそり虫の声 南行
虫の音や暗闇深く声高し まさ
虫時雨夜更けの目覚め酔いは醒め 徹
虫の音の黙(もだ)歩み寄る余寒かな 龍彦
当季句
秋色のキーウの街の空鞦韆 (4) 真砂
鳥瞰す富士の裾野の大花野 (3) 博石
長き夜や本を片手に夢うつつ (3) まさ
向日葵や見果てぬ夢に地は祈り (2) 徹
手に取りし秋刀魚の細さもの悲し (2) 小百合
秋晴れやピアノ発表会日曜日 (1) 良
マチュピチュの石の廻廊照らす月 (1) 博石
暫し待て芝目の上に赤とんぼ (1) 南行
ひつじ田や切り株跳び跳び友の家 (1) まさ
ふくらみて街の夜景と競う月 (1) 小百合
秋風の通ふ参道登りゆき (1) 孝枝
木の実降る児等の瞳はワンダーランド (1) 龍彦
枝豆を茹で砥部焼の皿に盛り (1) 孝枝
来し方や道のり遥か秋彼岸 (1) 徹
秋灯後ろ姿は父に似て (1) 孝枝
ベランダに二百十日の雨の音 龍彦
ラッパの音夕餉の友や冷奴 徹
酔芙蓉夜の灯火(ともしび)風の盆 龍彦
とりどりの鶏頭盛る鉢の中 小百合
野に出れば至る所に萩の花 良
川風や微かに聞こゆ蝉時雨 南行
秋麗や水張り盆に月映し まさ
自転車で衣靡かせ夏少女 南行
散歩道台風一過銀杏や 良
秋の虹女王陛下の大往生 博石
縁切りの橋姫神社におみなえし 真砂
躊躇ひて咲き遅れけり藤袴 真砂
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第24回「蘇鉄の会」ご案内
日時:2023年1月21日(土)
御題:兼題「七草または七草粥」1句
当季(冬)雑詠3句 計4句
選評講師:城下洋二先生
開催場所:都合により、会合による開催は取り止めとなり、
WEB上での開催となりました。
※ ご質問お問い合わせは下記メールアドレスにお願いします。
投稿締切:2023年1月15日(日)
投稿方法:兼題1句と当季雑詠3句の計4句
※あらかじめメールにて上記締切までに俳句の投稿をお願いします。
下記メールアドレス迄お送り下さい。
sato-nagashima@coast.ocn.ne.jp
ワード文書でファイル添付又はメールべた打ちでもOK。
「蘇鉄の会」参加を随時受付けています。
上記メールアドレスにお申込み下さい。
年会費:5,000円(振込先は別途ご案内)
~小石川後楽園~
江戸時代初期、寛永6年(1629年)に水戸徳川家の祖である頼房が、江戸の中屋敷(後に上屋敷となる。)の庭として造ったもので、二代藩主の光圀の代に 完成した庭園です。光圀は作庭に際し、明の儒学者である朱舜水の意見をとり入れ、中国の教え「(士はまさに)天下の憂いに先だって憂い、天下の楽しみに後れて楽しむ」から「後楽園」と名づけられました。
庭園は池を中心にした「回遊式築山泉水庭園」になっており、随所に中国の名所の名前をつけた景観を配し、中国趣味豊かなものになっています。また、当園の特徴として各地の景勝を模した湖・山・川・田園などの景観が巧みに表現されています。
(中略)
小石川後楽園は、江戸時代初期の寛永6年(1629年)に水戸徳川家初代藩主・徳川頼房(よりふさ)が江戸の中屋敷(明暦の大火後に上屋敷となる)に築造し、2代藩主・光圀の修治により完成した庭園です。江戸期において最も早く完成した大名庭園で、日本各地の大名庭園に影響を与えたといわれています。
小石川台地の南端に位置する起伏ある地形を利用し造られた園内は、池泉回遊式となっており、「大泉水」の「海」の景観を中心に、「山」「川」「田園(村里)」の変化に富む風景が歩を進めるごとに展開していきます。
(中略)
調和が美しく、四季折々に異なる表情を見せてくれる小石川後楽園は、今なお優れた景観を維持しており、特別史跡及び特別名勝として国の文化財に指定されています。
開園年月日:昭和13年4月3日
開園面積:70,847.17平方メートル(平成27年7月1日現在)
(東京都公園協会「公園へ行こう」webサイト『この公園について』より転載)
(以下、画像撮影:長島)
(2022/07/09) 担当:長島 公子 (事務局、19期)
俳句同好会 第22回「蘇鉄の会」報告
令和4年7月8日(金)午後1時より、東京都江東区清澄にあります史跡公園「清澄庭園」の池に突き出て建てられた「涼亭」において第22回蘇鉄の会を開催しました。
「(清澄庭園は)泉水、築山、枯山水を主体にした「回遊式林泉庭園」です。この造園手法は、江戸時代の大名庭園に用いられたものですが、明治時代の造園にも受けつがれ、清澄庭園によって近代的な完成をみたといわれています。
この地の一部は江戸の豪商・紀伊國屋文左衛門の屋敷跡と言い伝えられています。享保年間(1716~1736年)には、下総国関宿の藩主・久世大和守の下屋敷となり、その頃にある程度庭園が形づくられたようです。
明治11年、岩崎弥太郎が、荒廃していたこの邸地を買い取り、社員の慰安や貴賓を招待する場所として庭園造成を計画、明治13年に「深川親睦園」として一応の竣工をみました。弥太郎の亡きあとも造園工事は進められ、隅田川の水を引いた大泉水を造り、周囲には全国から取り寄せた名石を配して、明治の庭園を代表する「回遊式林泉庭園」が完成しました。
清澄庭園は、関東大震災で大きな被害を受けましたが、この時図らずも災害時の避難場所としての役割を果たし、多数の人命を救いました。岩崎家では、こうした庭園の持つ防災機能を重視し、翌大正13年破損の少なかった東側半分(現庭園部分)を公園用地として東京市に寄付し、市ではこれを整備して昭和7年7 月に公開しました。
また、昭和52年には、庭園の西側に隣接する敷地を開放公園として追加開園しました。ここには芝生広場、パーゴラなどがあります。また、サクラの木が20本ほど植えられ、春のお花見の場となっています。なお、庭園の方は、昭和54年3月31日に東京都の名勝に指定されています。
都立公園・都指定名勝
住所:東京都江東区清澄三丁目3-9
面積:37,434.32㎡
開園:1932年7月24日」
(東京都公園協会「公園へ行こう」webサイト『この公園について』より)
清澄庭園 涼亭
今回の参加は、講師を含む投稿者10名、全40句でした。
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城下洋二 講師 句
青梅の香や湯に子供入れしこと
慎ましき祈りの館半夏雨
山小屋の屋根の雨音夏炉焚く
室外機みな路地を向く暑さかな
令和四年七月
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【選評と講評】 講師 城下洋二 氏
≪兼 題≫
「青梅」
<特選>
青梅を丁寧にふき梅酒漬く 孝枝
丁寧にの一語でみんなに喜んでもらおうと梅酒をつけている感じが出ている。
青梅の三粒生りしを弄ぶ 博石
ようやく実のつけ始めた梅であろう。この数では梅酒にも梅干し
にもできないが、何となく愛おしくてついつい「弄ぶ」。
実の成り始めた梅に対する作者の思いがうまく表現できている。
<並選>
故郷や弟よりの青梅なり 良
上五を「や」で切る必要がない。むしろ「や」と「なり」の切れ字が重なり、どちらを重要視しているのか不分明なので避けたい
(添削例)故郷の弟よりの青梅なり
葉隠れの青梅一つまた一つ まさ
数詞は必然性がないと語呂合わせとなり、句が陳腐になる。この句の場合、葉に隠れていた実に気が付くと次々と見つかったという驚きの描写なので数詞の表現を工夫してみたい。
(添削例)葉隠れの青梅一つ三つ六つ
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≪当季句≫(夏)
<特選>
シャンソンが白雨の庭に響く午後 南行
外には驟雨、内にはシャンソン。二つの取り合わせで、夏の午後の気怠い感じがよく出ている。
空蝉よ集いて語れ終戦忌 龍彦
蝉ではなく、空蝉としたことで、戦争体験が風化していくことに
作者が危機を感じているのが私には感じられた。
更衣して朝礼の列増えしごと 孝枝
暗い色の制服から白い夏の制服へ一斉に変わった時の鮮やかな印象をよく捉えている。
<並選>
緑さす白き山肌尾瀬ヶ原 南行
緑さすの季語が初夏の尾瀬ヶ原の情景によく合う。
城の背にまんまるかかる夏至の月 真砂
月が懸かるというのは常套的なので省いたほうがいい。
(添削例)城の背にまことまんまる夏至の月
新しき服着てくぐる薔薇の門 孝枝
薔薇の門と新しき服の取り合わせがうまい。
二三日胡瓜採らねば規格外 博石
スーパーで見かける形の揃った野菜を見かけると不自然さを感じる。作者もそんな日本の現状に違和感を覚えているのだろう。
「規格外」の表現がうまい。
夏来たり傘寿の巡り宮参り 徹
傘寿おめでとうございます。ただ「傘寿の巡り」はよく分からないので、感謝の気持ちととって添削してみた。
(添削例)夏来たる傘寿の感謝宮参り
(参考)
日盛りの硝子戸のうち漱石房 真砂
漱石の旧居は「漱石山房」であり、固有名詞を造語に置き換えることはできない。
ただ「硝子戸の中」という作品名を織り込んでおり、
いい素材なので添削してみた。
字余りは上五にもっていくのが原則なので、
(添削例)漱石山房硝子戸の中日の盛り
ベランダで大葉ひろげるタフな紫蘇 小百合
俳句はすべて言うと味が無くなる。読者に想像の余地がないと散文や報告文になってしまう。この句の場合紫蘇と大葉は同じ事を意味するので避け、タフなとまではいわないほうがいい。ベランダも紫蘇も夏の季語なのだが、この句の場合季重りでも仕方ないと思う。
(添削例)ベランダや紫蘇の大きく葉を広げ
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第22回「蘇鉄の会」互選結果 ( )内数字は得票数
兼題「青梅」
葉隠れの青梅一つまた一つ (4) まさ
狭き庭にも鈴なりの青梅かな (3) 真砂
青梅を丁寧にふき梅酒漬く (1) 孝枝
青梅の一雨打ちて鮮やかや (1) 徹
ゴルフ茶屋青梅ふたつ空蒼し 南行
青梅の三粒成りしを弄ぶ 博石
青梅や連なる枝に蒼き風 龍彦
故郷や弟よりの青梅なり 良
庭先に並ぶ青梅唾がわく 小百合
当季句
田植え前水面を叩く燕たち (4) 博石
夏空に明日は巣立ちか四十雀 (3) 良
二三日胡瓜撮らねば規格外 (3) 博石
ここだけは晴れたる雨の花柘榴 (2) 龍彦
シャンソンが白雨の庭に響く午後 (2) 南行
田舎道植田は鏡よ山映る (2) まさ
空蝉よ集いて語れ終戦忌 (1) 龍彦
夏来たり傘寿の巡り宮参り (1) 徹
緑さす白き山肌尾瀬が原 (1) 南行
夏帽子被り少女の乙女さぶ (1) 孝枝
シャボン玉散る花びらとランデブー (1) 博石
紫陽花や変化を楽しむ雨の日々 (1) まさ
水映える田植えは間近旅列車 (1) 徹
ベランダで大場ひろげるタフな紫蘇 (1) 小百合
城の背にまんまるかかる夏至の月 (1) 真砂
落ちてなほ律儀に並ぶ実梅かな (1) 龍彦
新じゃがを茹でて夕餉の馳走かな (1) 真砂
遅ればせ息子の昇進嬉しけり 良
玉の汗ポロリ顎から落ちにけり 小百合
菜の花や地下はともし火果てしなく 徹
更衣して朝礼の列増えしごと 孝枝
つばめ来て並ぶ仲間と歌合戦 まさ
鳴り響く夏至の清水トランペット 南行
茄子焼いて冷えたビールで人心地 小百合
朝市や甘々娘大人気 良
新しき服着てくぐる薔薇の門 孝枝
日盛りの硝子戸のうち漱石房 真砂
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第23回「蘇鉄の会」ご案内
日時:2022年10月8日(土)12:30~16:00
御題:兼題「 虫一切 」(秋の虫、蟋蟀・バッタ・鈴虫など)1句
当季(秋)雑詠3句 計4句
選評講師:城下洋二 氏
開催場所:小石川後楽園 (文京区後楽1-6-6)
開催時間:12:30~16:00
参加費用:昼食代含め3,000円程度
投稿締切:2022年9月28日(水)
投稿方法:兼題1句と当季雑詠3句の計4句
※あらかじめメールにて上記締切までに俳句の投稿をお願いします。
下記メールアドレス迄お送り下さい。
sato-nagashima@coast.ocn.ne.jp
ワード文書でファイル添付又はメールべた打ちでもOK。
松山北高校同窓生の「蘇鉄の会」参加を随時受付けています。
上記メールアドレスにお申込み下さい。
年会費:5,000円(振込先は別途ご案内)
尚尚
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